二十二節より構成されたドラマ『兄貴』(中国名は『大哥』)は、現代の中国人の家庭をとてもリアルに描き出し作品だと、高く評価されています。
2002年4月に撮影が完了した本ドラマは、近年の中国で古風宮殿劇と反腐劇(官僚の腐敗を批判する劇のこと)がブームとなっていることに対して、もっと現実に近い中国に目を向けようということを意識した作品です。
中国人の普段の生活が解る作品を作りたいということが動機となったと言われています。
ドラマ『兄貴』は、兄の陳文海と他の4人の兄弟が、それぞれの人生の中で出会う出来事から強いられる無念と、それでもなお抱き続ける希望とを、余すところなく描き出した作品です。
まず主人公の陳文海は、リストラされて失業してしまうことによって、かなりの打撃を受けます。一家が息子の学費のことで悩んでいるその時、妻もまた失業する破目になってしまうのです。
また、離婚しようとしている三番目の弟は、兄の文海に「金を貸してくれ」と頼みにきます。四番目の弟もまた、兄に助けを求めにきます。
さらに「泣きっ面に蜂」のように、この大家族がみんなで頼りにしている兄の文海が、過労から重い病にかかってしまうのです。
「兄貴」という名称は文海に一生逃れられない重い責任を与えました。しかし彼はただ素直に、みんなの頼る気持ちを受け止めていきます。彼は自分より家族のことを優先します。家族それぞれの大変さで、自分のことを考える暇さえありません。
そうこうしているうちに、ようやく新年を迎える日がやってきました。大家族は久しぶりに一家揃って温かく幸せな新年を迎えることができたのです。
ドラマの中にはロマンチックな場面もあれば、温情たっぷりの場面、悲しい場面もあります。そんな陳さん一家の生活ぶりを通して、家族それぞれの仕事や生活、そして人情に対する考えが表現されています。
中国の「老百姓」(庶民の意味)の楽観的で前向きに逞しく暮らしていく姿は、多くの人々のこころを強く掴みました。
特に、「兄貴」の陳文海は、他人に情を与え、恩返しされ、それをまた倍に与える、ということの繰り返しの中で、いつしか人に感心される美徳で輝いていきます。
このドラマの魅力は、わざとらしい修飾がなくて、普段の隣人のこと、あるいは自分のことを自然に表現しているところにあると言われています。
このドラマには、他のドラマによく見られる高級別荘やゴルフ場など、現実の中国の一般家庭からはまだかけ離れた存在のものが少なく、普通の中国人が住んでいる少し貧乏くさい家での、煩雑な日常茶飯事を中心に語っているのです。リアリティ溢れる設定が観客の共感を呼ぶのです。
日本にいながらにして中国人の一般的な生活を知りたい、中国の老百姓の考え方などを知りたいという方には、ドラマ『兄貴』をぜひお勧めしたいと思います。
今後も、『兄貴』ような中国国内向けに作られたドラマや映画を徐々に紹介していきたいと考えています。ご意見やご感想のある方は、下記のメールアドレス、あるいは「ワイガヤ掲示板」にてどんどん書き込んでくださいね。あなたの忌憚ないご意見をお待ちしております!!