第22回香港映画金像賞の受賞候補者リストの中で、実に16部門を占めた作品は、2002年の年末、大不振だった香港映画界にあって一つだけ気を吐いた劉偉強(アンドリュー・ラウ)監督のヒット作、『無間道』でした。
この作品が獲得した16部門という数は、受賞候補者リストに挙げられた数の史上最高記録を更新しました。
この映画の見所は、なによりその出演陣の豪華さでしょう。主役の劉徳華(アンディ・ラウ)と梁朝偉(トニー・レオン)の二大スターはもとより、曾志偉(エリック・ツァン)、黄秋生(アンソニー・ウォン)を加えた四大影帝(最優秀主演男優賞受賞者)が一つの作品の中で競演するという、近年稀にみるその迫力は観客の注目を惹きつけるのに充分なものでした。
さらに、アンディ、トニーの少年時代をそれぞれ陳冠希(エディソン・チャン)と余文樂(ショーン・ユー)が演じる他、2人に関わる女性たちとして鄭秀文(サミー・チェン)、陳慧琳(ケリー・チャン)、蕭亞軒(エルバ・シャオ)といった影后(最優秀主演女優賞受賞者)レベルの豪華女優陣が出演しているのです。彼女たちが、男達のドラマに可憐な花を添えています。
いくら最高の出演陣であっても内容のある映画でないと、彼らを充分に活かすことができず、不完全燃焼の作品になってしまいます。
しかし、2002年末に『無間道』が巻き起こした熱気から、この映画が実にクオリティの高い作品だということがお解りになると思います。
さて、本映画のストーリーを簡単に紹介します。『無間道』は、警察官とマフィアという二重の身分を持つ2人の男の物語です。
劉健明(アンディ)は18歳の頃、裏社会のボス、韓(エリック・ツァン)に見込まれ、スパイとして警察学校に潜り込みました。
7年後、彼は刑事情報科のチーフにまで出世します。一方、陳永仁(トニー・レオン)は、立派な警察官になりたくて警察学校に入学したのですが、まもなく本人の健康状態が警務の仕事に適しないという理由で退学させられます。
しかし本当の理由は、警察が狙う韓の組織を殲滅するために、おとり捜査官として裏社会に送り込まれたのです。そして7年後、彼は韓の右腕として組織の信頼を得る位置にまで昇っていました。
しかし、ある事件によって、両陣営ともお互いの中にスパイが潜んでいることに気付きます。スパイが見つけ出されていく中で、それぞれが二重のアイデンティティを持つという悩みをかかえることとなります。
同時に正体が暴かれる危機に瀕するこの2人は、ようやくそれまでの無限の地獄のような世界を飛び出して、本来の自分に戻ろうとします。
彼らは運命に弄ばれることになるのか、それとも人力が天命を打ち負かすのか。最後は、意外な結末が待っています。
アンディは颯爽と、トニーは黒社会で暗躍する危うい雰囲気を漂わせ、どちらも人気と名声にたがわぬ演技で見ごたえ十分です。
トニーの本当の身分を知る唯一の人物である上司の黄秋生(アンソニー・ウォン)、アンディのボスでおとり捜査官とは知らずにトニーを片腕と頼む曾志偉(エリック・ツァン)の駆け引きもなかなか見ものです。
このため『無間道』は、しっかりしたストーリーとキャストによる久々の香港映画らしい香港映画だという評判がされています。
今のところ本作品は、まだ日本で上映されていませんが、DVDが販売されていますので鑑賞することが可能です。再び香港映画に自信を与えてくれた本作をぜひ見逃さないようにしてくださいね。