この映画は、岩波ホールの「エキプ・ド・シネマ」ということもあって、とても期待して見に行きました。
97年の香港返還の年にこの映画が香港・大陸で封切られたことも大変興味を掻き立てるものがあります。ただし、香港返還の年に香港の映画界がこれほど大陸(中華人民共和国)に媚びを売り始めていることに愕然としました。テーマは、確かに歴史と深く関わってきた3姉妹の生き様です。ただし、孫文に嫁いだ「宋慶齢」が美化されすぎ、蒋介石に嫁いだ「宋美齢」がイメージを悪く描かれていたような気がします。実業家に嫁いだ「宋靄齢」の出番はほとんどなく、「宋家の2姉妹」といっても良いと思います。台湾統一に向けた「プロパガンダ的映画」とも受け止められます。
つまり、イデオロギーを越えて「家族」「民族」が大切だと、だから統一されるべきだと…(しかも大陸主導で…)
次に感じたのは、当時上海がいくら国際都市だったとしても、何もあそこまでおしゃれにしなくても…ということです。大陸の当時の人々のくらしがあまりにも美化されすぎているように感じました。香港生まれの香港育ちの監督なのでそうなってしまったでしょう。
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映画の中の「三姉妹」実際より当然美人系。 |
こちらが本物、実際は6人きょうだい。 |
香港のレトロでおしゃれな「上海灘」という雑貨屋さんを思い出してしまいました。但し、今の上海にも実際に20年代、30年代の上海を美化するムードは存在します。
小さな図書館の様な本がいっぱいでアンティークの家具に囲まれた喫茶店「漢語書院」や1920'sといった個性的な喫茶店も少しずつ出てきています。
何だか悪口ばかり書いてしまいましたが、この映画の見所は、きれいな映像と音楽でしょう。衣装は、アカデミー賞受賞者の「ワダ・エミ」でゴージャスなブライダルパーティーの衣装から共産党の軍服までヴァリエーションあふれる衣装をきれいに作っている。
音楽には、喜多郎の名前もあった。
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このシーンは何故か多分北京…、でもきれいなシーンでした、この映画の中で好きなシーンの一つです。 |
実際の中国を知っているからか、あまりにもきれいすぎて今ひとつ、現実味がなかったというのが正直なところです。「三姉妹」のおとうさん、チャーリーの英語まじりの中国語も聞いていてちょっと恥ずかしかったし、何よりも当時本当に「チャーリー」などと自分のことを名乗っていたのでしょうか?
最後にこの映画のキャッチコピー「一個愛銭、一個愛権、一個愛国」(一人は金を愛し、一人は権力を愛し、一人は国を愛した)ですが、やはり大陸に媚びを売る「香港」が感じられる映画でした。
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蒋介石と美齢、何となく井森美幸に似ていました。 |
監督……………張婉●1 Mabel Cheung
宋慶齢…………張曼玉 Maggie Cheung
宋靄齢…………楊紫瓊 Micchelle Yeoh
宋美齢…………●2君梅 Vivian Wu
孫文……………趙文●3 Winston Chao
蒋介石…………呉興国 Wu Hsing-Kuo
チャーリー宋…姜文 Jiang Wen
●1 女へんに亭
●2 烏へんにおおざと
●3 王へんに宣