代表的な四川料理の一つ「火鍋」という変なタイトルのオムニバス形式のラブストーリーです。
「火鍋」いうのは、ラー油を使ったしゃぶしゃぶのようなものでしょうか?ただし、一般的には鍋が真ん中でS字型に仕切られていて、一方には「辛いスープ」もう一方には辛くない鶏ガラの「白いスープ」が入っていてそのスープで具を煮込むのです。「鴛(おしどり)鍋」とか「両色鍋」とか呼ばれるこの料理、天津でも結構食べました。
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これが映画のタイトル「オシドリ鍋」 |
さて、この映画は5つのストーリーはオムニバス形式で構成されています。そのつなぎ方が、ジムジャームッシュの「ミステリートレイン」や「NIght on the Planet」を彷彿させます。そのいずれもがテーマは「恋愛」と「結婚(離婚)」、現在の中国を反映したとても面白いストーリー展開です。
個人的には、1話目の初恋の話がかわいくて好きなのと、5話目が現在の中国の都会を感じさせて好きです。内容については、詳しくはふれませんが中国映画には珍しく肩の力を完全に抜いて見ることのできる映画です。その理由の一つに、どの作品にも流れる中国ポップスが影響しているのでしょう。
この映画で流れる中国ポップスそして北京ロック。とにかく中国大陸で若者に人気の音楽の傾向をこの映画一本で感じ取ることができます。中には周華健(エミール・チョウ)のように映画に脇役ですが出ちゃっているミュージシャンもいます。収録曲は
想一個男生 莫文尉(カレン・モク) 香港
朋友 周華健(エミール・チョウ) 台湾
鴨子 蘇彗倫(ターシー・スー) 台湾
到処乱走 劉若英(レネ・リウ) 台湾
不再譲イ尓孤単 陳昇(ボビー・チェン) 台湾
這様也好 任賢斉(リッチー・レン) 台湾
訪問 劉沁(リウ・チン) 大陸
星星推満天 楊乃文(フェイス・ヤン) 台湾
親親我的宝貝 周華健(エミール・チョウ) 台湾
把悲傷留給自己 陳昇(ボビー・チェン) 台湾
我的心好乱 趙伝(チャオ・チュアン) 台湾
無心傷害 杜徳偉(アレックス・トウ) 香港
不用告別 超戴(オーヴァーロード) 大陸
我明白 林憶蓮(サンディ・ラム) 香港
李宗盛(ジョナサン・リー) 台湾
結婚 張楚(チャン・チュウ) 大陸
と香港、台湾、そして大陸(特に北京ロック)が中心。そういえば映画を見ている間、香港のトレンディー映画を見ている錯覚に陥ったのはこの挿入音楽の影響ではないでしょうか?
僕が5話目が好きなのは、北京ロックがほど良く入っていて、ストーリー自体に多少重さを加えて入る点です。この映画、スパイシー・ラブ・スープというには、それほど刺激的な映画ではないのですが、どのストーリーにもほどほどの辛さがあります。さしずめ日本人に合わせた辛さといったところでしょうか?
映画のあと無性に「四川火鍋」が食べたくなってしまい、プログラムに載っていた渋谷の「天府席大火鍋堂」という火鍋屋に行きました。この映画通りの日本人の口に合う適度な辛さと品の良い海鮮がメインの具でおいしかったです。
でも中国の若手が作る映画もここまできたか…今の中国を感じたい方には、おすすめの一本です。それから中国語を勉強している方にも…映画の中の中国語は、まさに現在の中国の若い人の日常会話そのものです。2話目にシルバー世代の結婚がテーマの話がありますが、その主役の唐斯復の話す中国語がゆっくりとしかも発音がきれいでNHK教育テレビの中国語講座を見ているようでした。
彼女実は、上海の「文匯報」という有名な新聞(プログラムには文芸誌とありましたが…たしか新聞だったと思います)の記者だそうです。品のいい未亡人をさがしていて30年前に中央戯劇学院・演劇科を卒業した彼女に白羽の矢がたったのだそうです。
この映画では、中国のテレビコマーシャルやテレビドラマに出ていた人が結構出ていますので、中国に住んだことのある人は「あれぇ、この人どこかで見たことある。」という人がいるに違いありません。いろいろな楽しみ方ができる映画です。
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どこかで見たことあると思ったら「松下電器」のCMのコだったりしました |
ゼネラルプロデューサー…張丕民 Zhang Pi-Min
プロデューサー……………Peter Loehr(アメリカ人)
監督…………………………張揚 Zhang Yan