この映画も、毎度おなじみ岩波ホールの「エキプ・ド・シネマ」です。
とは言ってもこのレヴューをアップするのが半年も遅れている間に私の地元町田でも上映されていますが…
原作は湖南省出身の小説家・彭見明(ポン・ジエンミン)という人の短編小説「那山 那人 那狗」、原作はとても短いそうです。
その小説を読んだ監督の奥様(脚本家)が大変感動して1ヶ月かけて脚本を書き、映画化に挑んだそうです。夫婦の合作なのですね…
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実際のロケも行われた物語の舞台・湖南省はこんな田舎にあります。 確か「毛沢東」の出身地だと思います。 おとなりの貴州省は中国で一番貧しい地方として有名です。 映画を見て一度行ってみたくなりました。 |
この映画は郵便配達を引退する父が、その仕事を息子に引き継ぐために配達ルートを一緒に回るロードムービーです。配達ルートといってもそこは広大な中国のこと、二泊三日かけて120キロを巡回ししかも配達するだけでなく、郵便物の回収もあるので背中に背負った重い鞄は軽くなることはありません。
当初は息子と道案内の犬(名前は次男坊、一人っ子政策の中国ならではペーソスに富んだ命名ですね)と一人+一匹で巡回に出るはずでしたが、長年父と苦楽を共にした次男坊はどうしても家に残る父のそばを離れようとはしません。そこで困ってしまった父が引継も兼ねて同行することになり物語が始まります。
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初老の父と次男坊(犬)そして息子と母 |
巡回の旅はもちろん容易ではありません。老いたとはいえ長年巡回を続けた父に対して息子の若さもここでは頼りないとしかうつりません。
ある村で都会で成功した息子を持つ盲目の母親がいます。息子は年に何度かお金だけは送るものの手紙は書きません。孤独な母親に頼まれて初老の郵便配達は手紙を読み始めます。しかし読んでいるのは白紙の紙、それを知らない息子、突然父に「続きを読んであげなさい」と白紙の手紙を渡されます。びっくりしつつも何とか続ける息子、父の仕事が単純ではなく人々の生活に深く入り込んでいるということと父親の人間的な深さを知ります。
他にもエピソードをいくつか通して息子は自覚を深めていくと共に、父が現場にこだわり役所に入り名誉を得ることを拒んだ理由が少しずつ分かってきます。
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お父さんは郵便局員の制服姿、息子はTシャツ姿。父親と息子の古き良き理想的な姿が生き生きと描かれていました。 |
郵便箱から回収するシーン。手紙に切手ではなく現金を貼ってあったりするところが中国、しかもそれでも回収して切手を貼ってあげるところも中国らしかった。 |
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