この映画は中国映画ではありません。監督は戴思杰、この人は元々給費留学生として84年に中国からフランスに渡りパリ大学で美術史を学んでそのままフランスに住み着いてしまったエリートです。両親を医師にもつ知識階級の子に生まれ、17歳の時、四川省の西康というところに下放されその時の体験を小説に書いた作品の映画がこれです。
以前「中国、わがいたみ」(日本未公開)という映画でフランスの新人監督の登竜門であるジャン・ヴィゴ賞を受賞しているそうです。その時は2年間待ったけれども中国国内での撮影許可が下りずに国外で撮影したんだそうです。今回は1年間待った末に中国国内でのロケが許可されたとのことです。忘れていけないのは開放されているようでも中国は社会主義、文化大革命を題材にした映画は未だに厳しい面がありようです。
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ここがロケ地、なかなか味があります 映画の中で舞台は四川省ということになっていますが 実際のロケ地は湖南省の張家界だそうです |
ロケ地については、監督(=作者)が文化大革命の頃に下放された村を使いたかったということですが、道路が寸断されていたりした状況で断念し類似する場所にしたようです。(映画では四川省の鳳凰山ということになっていてダムの底に沈むという設定ですが実際のロケ地は湖南省の張家界というところの山中だそうです)※映画の中の農民はバリバリの四川訛の中国語でした
タイトルのバルザックやマー少年が弾くモーツアルトと農民のコントラストが非常におもしろいと思いました。でも、僕も実はバルザックなんて読んだこともありません。バルザックを読んでいればもう少し深くこの映画を理解することができたのではないかと残念に思いました。
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農民にバイオリンを壊されそうになり ルオのついたとっさの嘘「モーツアルトのソナタは毛沢東を讃える曲」に農民が弾いてみろというので モーツアルトを弾くマー少年 |
下放されてきたマーとルオ、農民との差が歴然でした でも未だに中国は都市と農村の差は歴然で しかもその差は拡大する一方 |
この映画は、二人の少年と一人の少女 三人で展開される恋愛物語と字も読むことができない少女が本を通して成長し自我を確立していき ついには一人で都会へと旅立っていくという二つの側面をもつ話…ストーリーもシンプルで非常に分かりやすい内容です。
しかもパンフレットにも書かれていたことですが、仕立屋のおじいさんの風貌やおじいさんがモンテ・クリスト伯爵に感化されデザインするマリン風の洋服や村長の虫歯の治療風景等がどことなくユーモラスでちょっとリアルな世界から離れるところもあって「文化大革命」時代をテーマにした映画特有の暗さをうち消している。これも監督が15年フランスに住んでいることでずーっと中国に住んでいる監督とは違ったフィルターが培われているのだと思います。
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ルオとマーと村の女の子(この少女は最後まで名前がなく最後まで「仕立屋の孫」と呼ばれていた)3人でバルザックを読んでいる こんな映像はいかにもフランス的 |
少女は結局、ルオという少年と恋に落ちるが マーの彼女に対する愛情の表現の仕方が静かなので ドロドロした関係にはならなくてほっとする |
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